遠投100mならスピードガンで何km/h出るのか。さらに150mなら何km/hなのか。日本とアメリカの研究・実測資料を調べ、推測ではなく確認できたデータを基に検証します。
結論
- 遠投100mと球速を直接換算する公式は、現在確認できません。
- 米国では300ft超(約91m)の遠投を約90mph(約145km/h)とする実例があります。
- Jaeger Sportsも90mphの投球が約270~300ft(約82~91m)を飛ぶという目安を紹介しています。
- 遠投150m(約492ft)について、スピードガンによる信頼できる実測値は今回確認できませんでした。
- したがって「100m=130km/h」「150m=○km/h」と単純比例させるのは危険です。
FAQ
① 注目ポイント・注意点
最大のポイントは、遠投距離とスピードガンの数値は関係しますが、1対1で決まるわけではないことです。特にリリース角度や助走、ボールの回転、投球フォームによって飛距離は大きく変わります。
② 重点の内容
アメリカのDriveline BaseballやJaeger Sports、長投に関する医学・スポーツ科学研究を確認し、「実際に確認できる数字」と「推測」を分けて整理します。
③ どんな読者におすすめか
遠投100m以上を目指す野球選手、肩の強さを球速と比較したい選手、少年野球・高校野球の指導者、そして「遠投○mなら球速は何km/hなのか」という疑問を持つ人におすすめです。
遠投距離とスピードガンの関係を実測資料から検証
まず100mは何フィートなのか
野球の遠投をアメリカの資料と比較するには、メートルをフィートに換算する必要があります。
100mは約328ftです。つまり「遠投100m」という数字は、アメリカの野球界でいう300ftを超えるロングトスに相当します。
ここで非常に参考になるのが、米国のDriveline Baseballに掲載されたBen Brewsterのインタビューです。
Brewsterは高校時代にトライポッド式のレーダーガンを使った最大努力の投球を行っており、大学ではロングトスを実施していました。その中で、良い日は300ft超まで投げられ、それが「約90mphの投球」に相当すると説明しています。
90mphをkm/hに換算すると約144.8km/hです。
つまり、少なくともアメリカには、
300ft超(約91m) → 約90mph(約145km/h)
という本人による実例があります。
これは「遠投100mなら必ず145km/h」という意味ではありません。しかし、「遠投100m級と145km/h前後の球速が同じ選手に存在する」という重要な実測・経験データです。
さらにJaeger Sportsも、90mphの投球が約270~300ft(約82~91m)を飛ぶという目安を紹介しています。
したがって、遠投100mを考える場合、アメリカ側の資料からは「90mph前後=145km/h前後」という数字が一つの比較材料になります。
では「遠投100m=130km/h」は正しいのか
日本では「遠投100mなら130km/h程度」という話を見かけることがあります。
しかし、今回確認できた研究資料を見ると、遠投距離と球速の関係はそれほど単純ではありません。
日本の大学野球投手12人を対象にした研究では、20mから80mまで距離を変えてロングトスを行い、距離とリリース角度がボールの速度にどのように影響するかが調べられています。
研究では、20~40m、40~70m、70~80mと距離帯によって速度の変化が異なり、特に遠距離ではリリース角度の上昇とリリース速度との関係が確認されています。つまり、単純に「距離が10m伸びたら球速が何km/h上がる」という関係ではありません。
さらに、60人の高校・大学投手を対象にした米国の研究では、90、120、150、180ftなど段階的に長投を行い、各距離でレーダーガンによるボール速度を測定しています。その結果、投球距離が進むにつれてボール速度は有意に変化しましたが、選手間の違いも大きいことが示されています。
ここが非常に重要です。
遠投距離から球速を逆算することはできても、「全員に当てはまる換算表」として扱うことはできません。
同じ100mでも、低い弾道で強く投げる選手と、高い角度を使って遠くまで投げる選手では、必要なリリース速度が違います。
遠投150mなら何km/hなのか
150mは約492ftです。
これは300ft超の遠投よりさらに約190ftも長く、アメリカで一般的に紹介されているプロ投手のロングトスの範囲を大きく超えます。
今回確認した米国資料では、300ft超のロングトスと約90mphという実例は見つかりました。一方で、「150m(約492ft)を投げ、その瞬間の球速をスピードガンで測定した」という信頼性のある実測資料は確認できませんでした。
また、MLB関係者を対象にした研究でも、長投(long-toss)の定義そのものに大きなばらつきがあることが分かっています。プロ野球選手、投手コーチ、アスレチックトレーナー321人への調査では、長投と考える平均距離は175ft(約53m)でした。投手やコーチ、トレーナーの間でも「どこからが長投なのか」という認識が異なっています。
近年の高校投手を対象とした研究でも、長投の平均距離は約67mで、最も多かった回答は75mでした。150mは一般的な長投とはかなり異なる距離だと分かります。
そのため、150mについて「100mが145km/hだから150mなら217.5km/h」のような比例計算をするのは明らかに適切ではありません。
むしろ現時点で最も正確な答えは、
「遠投150mとスピードガンの数値を同時に測定した信頼できる実測資料が確認できないため、何km/hとは断定できない」
です。
これは数字を出せないのではなく、根拠のない推測値を実測値として扱わないための結論です。
まとめ
遠投100mとスピードガンの関係を調べると、アメリカには300ft超(約91m)のロングトスを約90mph(約145km/h)とする実例があります。これは遠投100mを考えるうえで非常に参考になる数字です。
一方、「遠投100m=必ず130km/h」や「150mなら○○km/h」と断定できる公式は確認できませんでした。
特に150mは約492ftという非常に長い距離で、今回確認できた米国の長投資料でも、距離とレーダーガンを同時に測った信頼できる実測値は見つかりませんでした。
したがって現段階では、100mは約145km/h級の実例が存在するが、100mと球速は一意に対応しない。150mについては実測データが不足しているため断定できないというのが、推測を排除した最も妥当な結論です。
今後、MLB選手、大学野球、高校野球、海外の強肩選手について「遠投距離+スピードガン」の両方が記録された事例が集まれば、100mから150mまでのより信頼性の高い比較表を作れる可能性があります。

