中東情勢の悪化によってホルムズ海峡を通る原油輸送が大きく混乱し、日本のエネルギー供給にも影響が及んでいます。一方、ガソリンスタンドでは価格が下がる場面もあり、「日本はどこから原油を調達しているのか」と疑問に思う人もいるでしょう。本記事では、中国の石油事情、北朝鮮への石油供給、日本の代替調達、備蓄とガソリン価格の関係をわかりやすく解説します。
結論
- 中国は石油を自国でも生産している:国内生産だけでは需要を満たせず、ロシアや中東などから原油を輸入しています。
- 北朝鮮は中国から石油の供給を受けている:原油や石油製品が供給されていますが、制裁や非公式な調達も関係するため、全体の供給量を正確に把握するのは困難です。
- 日本は中東以外からの原油調達を拡大している:米国、南米、アジア太平洋、中央アジア、アフリカなどから代替調達を進めています。
- 石油備蓄と政府の補助金が供給や価格を支えている:備蓄は供給不足への対策、補助金はガソリンなどの小売価格の急騰を抑える対策です。
- 中国も日本も影響を受けている:中国は大規模な備蓄やロシアとのパイプラインを活用できる一方、日本は中東への依存度が高く、代替調達と輸送コストへの対応が重要です。

FAQ
Q1. ホルムズ海峡から原油がまったく入ってこないのですか?
A. 2026年10月13日時点では、ホルムズ海峡周辺の情勢悪化によって原油輸送が大きく混乱しています。ただし、輸送が完全にゼロになったと一律に断定することはできません。通航状況や各国の調達量は時期によって変わります。
Q2. 日本はどこから原油を持ってきているのですか?
A. 米国、アラスカ、南米、アジア太平洋、中央アジア、アフリカなどから代替調達を進めています。また、ホルムズ海峡を通らずに輸送できる原油の確保にも取り組んでいます。
Q3. なぜ原油の供給が不安定なのにガソリン価格が下がるのですか?
A. 原油価格だけでなく、政府の補助金、為替相場、製油所の在庫、卸売価格などが小売価格に影響するためです。ガソリン価格が下がっていても、原油の供給問題が解消したとは限りません。
Q4. 中国はロシアから石油を買えるので、日本より有利なのですか?
A. 中国はロシアからパイプラインや船で原油を調達できるため、供給経路の選択肢があります。ただし、中国も輸入量の減少や原油価格の上昇、精製量の調整などの影響を受けています。
Q5. この記事はどのような読者におすすめですか?
A. ガソリン価格の変動が気になる人、ホルムズ海峡危機と日本経済の関係を知りたい人、中国や北朝鮮の石油事情に関心がある人、エネルギー安全保障について理解を深めたい人におすすめです。
ホルムズ海峡危機と日本・中国の石油事情を詳しく解説
1. 中国は石油が出る国なのに、なぜ輸入が必要なのか?
中国は世界有数の原油生産国です。国内の油田で石油を採掘していますが、経済規模が大きく、工場、トラック、自動車、船舶、航空機などで大量の石油を消費するため、国内生産だけでは需要を満たせません。
そのため、中国はロシアやサウジアラビア、イラクなどから原油を輸入しています。
中国の特徴は、輸入先と輸送手段を複数持っていることです。中東からは主にタンカーで原油を運び、ロシアからは船に加えてパイプラインでも調達しています。パイプラインは海上輸送とは別の経路なので、ホルムズ海峡の混乱が直接及びにくいという利点があります。
さらに、中国は石油備蓄の積み増しを進めてきました。米国エネルギー情報局(EIA)の推計では、政府保有分と商業在庫を合わせた中国の石油在庫は、2025年末に約14億バレルに達していました。ただし、これは商業在庫などを含む推計値であり、すべてを直ちに使用できる国家備蓄と考えることはできません。
2026年にはホルムズ海峡周辺の混乱を受け、中国の原油輸入量も減少しました。中国はロシアなどからの調達、備蓄の活用、製油所の稼働調整によって対応しています。
つまり、中国は石油問題と無縁なのではありません。複数の輸入経路と大規模な在庫を活用しながら、供給不足を乗り切ろうとしているのです。
北朝鮮についても、石油供給を考えるうえで中国は重要な存在です。北朝鮮は中国から原油やガソリン、軽油などの石油製品を供給されています。ただし、国連制裁による上限が設けられており、非公式な調達も問題になっています。中国からの供給だけですべての需要が賄われていると断定することはできません。
2. 日本はどこから原油を調達し、どうやってガソリンを供給しているのか?
日本は原油の大部分を海外から輸入しており、長年にわたって中東への依存度が非常に高い状態が続いてきました。そのため、ホルムズ海峡を通る輸送が混乱すると、原油の調達や輸送コストに大きな影響が生じます。
こうした状況を受け、日本政府と石油会社は中東以外からの代替調達を進めています。
主な調達先や選択肢は次のとおりです。
- 米国・アラスカ:米国産原油を調達し、中東以外の供給源を確保する。
- 南米:ブラジルなどの産油国から調達する。
- アジア太平洋地域:中東以外の地域から調達する。
- 中央アジア・アフリカ:調達先の分散によって供給リスクを抑える。
- カナダ・メキシコ:新たな調達先として輸入を進める。
2026年6月、日本政府は代替調達の状況について、同月に必要となる代替調達量の約80%を確保し、7月は前年同月と同程度の調達量を見込める状況になったと説明しました。米国からの輸入も大幅に増える見通しが示されました。
ただし、原油の調達先を変更すれば、それで問題がすべて解決するわけではありません。産油国から日本までの距離、タンカーの確保、輸送日数、保険料、原油の品質なども考慮する必要があります。
原油が到着した後は、日本国内の製油所で精製され、ガソリン、軽油、灯油、ジェット燃料などになります。したがって、ガソリンの供給を維持するには、原油の確保だけでなく、輸送、精製、国内配送までの流れを保つことが重要です。
また、日本には国家備蓄と民間備蓄があります。備蓄は輸入が滞った際の重要な緩衝材ですが、無制限に使えるものではありません。供給が長期間にわたって不安定になれば、調達費用の上昇や在庫の減少が問題になる可能性があります。
3. ガソリン価格が下がる理由と、今後注意したいポイント
原油の供給が不安定になっているのに、ガソリンスタンドの価格が下がることがあります。一見すると矛盾しているようですが、ガソリン価格は原油価格だけで決まるものではありません。
まず、政府による燃料価格の抑制策があります。日本では2026年3月19日から、中東情勢を踏まえた緊急的な価格抑制措置が実施されています。
資源エネルギー庁の公表情報によると、2026年10月8日以降のガソリンに対する支給単価は1リットル当たり42.4円です。この支援は、石油元売り会社などに価格引き下げの原資を支給し、燃料価格の急騰を抑える仕組みです。
ただし、42.4円がそのまま全国すべてのガソリンスタンドで値引きされるという意味ではありません。実際の販売価格は、仕入れ価格、在庫、地域の競争状況、販売店の価格設定などによって変わります。
ガソリン価格に影響する主な要因を整理すると、次のようになります。
| 要因 | ガソリン価格への影響 |
|---|---|
| 原油価格の上昇 | 仕入れコストを押し上げる |
| 円安 | 輸入原油の円換算価格を押し上げる |
| 政府の補助金 | 価格上昇を抑える方向に働く |
| 石油会社の在庫 | 価格変動が小売価格に反映される時期に影響する |
| 輸送費・保険料 | 調達や配送のコストを押し上げる |
| ガソリンスタンド間の競争 | 地域ごとの販売価格に影響する |
つまり、ガソリン価格が少し下がったからといって、ホルムズ海峡の問題が解決したとは限りません。補助金によって値上がりが抑えられている場合もあれば、原油の仕入れ価格や在庫の変化が遅れて反映される場合もあります。
さらに、供給を維持できていることと、安い価格を維持できることは別の問題です。代替調達が進んでも、輸送距離が長くなったり、タンカーの保険料が上がったりすれば、輸入コストが増える可能性があります。
今後の状況を判断するには、ガソリンスタンドの価格だけを見るのではなく、政府が発表する代替調達量、石油備蓄の状況、原油価格、為替相場、補助金の支給単価を合わせて確認することが大切です。
まとめ
ホルムズ海峡をめぐる石油輸送の混乱は、日本、中国、北朝鮮それぞれのエネルギー事情に影響しています。
中国は国内生産に加えて、ロシアなどからの輸入、パイプライン、大規模な在庫を活用しています。一方、日本は中東への依存度が高いため、米国や南米などへの調達先の分散と備蓄の活用が重要です。北朝鮮についても、中国からの石油供給が大きな意味を持っています。
日本のガソリン価格が下がっている場合でも、その理由を原油供給の回復だけに求めることはできません。政府の補助金、輸入価格、為替、在庫など、複数の要因が関係しています。
私たちの生活に直結するガソリン価格を理解するには、目先の値動きだけでなく、原油がどこから来て、どのように精製され、どのような政策で価格が調整されているのかを知ることが役立ちます。今後も日本の代替調達と備蓄の状況を確認しながら、エネルギー供給の変化を見ていくことが大切です。

