平城京木簡11万点に朝鮮語?新羅語・百済語を検証

歴史

はい、ここはかなり重要なポイントです。説明をさらに厳密に修正すると、「朝鮮語が1万点ある」という理解は誤りであり、また「では全部新羅語なのか」という点も、そこまで単純には断定できません。

奈良文化財研究所の木簡データベースを確認すると、平城京では実際に「百済」「百済人」「百済王」などを記した木簡は存在します。しかし、それらは百済語で文章を書いた木簡という意味ではありません。例えば「百済部伎弥麻呂」という人名を記した木簡があります。これは710~720年頃のものとされています。

「朝鮮語1万点」の何が問題なのか

平城京・平城宮跡から出土した木簡は、奈良文化財研究所の資料では約11万点に達します。

しかし、

11万点 × 10% = 約1万点が「朝鮮語」

という数字には根拠がありません。

そもそも木簡の大部分は、日本の律令国家が漢字・漢文を使って作成した行政文書、荷札、帳簿、人名・地名などです。

そして、ここで非常に重要なのが、

「朝鮮半島出身者の名前が書いてある」
=「朝鮮半島の言語で書かれている」

ではないことです。

例えば奈良文化研究所のデータベースには、

「従六位上行少進勲十二等百済王全福」

という人物名を含む736年の木簡があります。

これは「百済王全福」という百済系の氏族・人物を示す資料として重要ですが、文章そのものが百済語で書かれているわけではありません。


では「新羅語なのでは?」という推論はどうか

ここは、あなたの考えにはかなり重要なポイントがあります

8世紀の日本で「朝鮮語」という現代語をそのまま想定するのは適切ではありません。

当時の朝鮮半島には、

  • 新羅
  • 百済
  • 高句麗
  • その後の統一新羅

などがあり、それぞれの言語・方言・言語史を考える必要があります。

ただし、

「百済・高句麗=扶余語、新羅=別系統だから、残るのは新羅語」

と一直線に結論づけるのも、現在の言語学では少し危険です。

古代朝鮮半島の言語については、資料そのものが非常に限られているからです。国立国会図書館の書誌にも、古代の「高句麗・百済・新羅の言語」をそれぞれ検討する研究が収録されています。つまり、三国の言語を一括して「昔の朝鮮語」とするのではなく、個別に検討する必要があります。

特に重要なのが「新羅語」

新羅語は、古代朝鮮半島の言語史を考えるうえで非常に重要です。

後世の朝鮮語につながる言語史を考える際、新羅・統一新羅の言語資料は重要な位置を占めます。

ただし、

「新羅語=現代韓国語」

でもありません。

また、新羅語についても、現代語のような大量の文章資料が残っているわけではありません。

したがって、

「平城京に新羅語で書かれた大量の木簡がある」

とは言えません。


そして「百済・高句麗は扶余語」も少し注意が必要

ここも非常に面白いところです。

古代東アジアの言語分類では、扶余系諸語という考え方があります。

そこから、

扶余 → 高句麗・百済など

という系統関係を想定する研究があります。

しかし、古代の言語資料は断片的なので、現代の言語学で完全に確定した系統図が存在するわけではありません。

したがって、

百済語=完全に扶余語
高句麗語=完全に扶余語
新羅語=完全に別系統

と断定してしまうのは避けたほうがいいでしょう。

むしろ、

「高句麗・百済と扶余系言語との関係が論じられている一方、新羅語は別の位置づけで研究されてきた」

くらいに表現するのが安全です。


さらに重要なのは「言語」と「文字」を分けること

ここが今回の話の核心です。

奈良時代の日本では、

話している言語
書いている文字・書記言語

が必ずしも一致しません。

例えば新羅出身者が奈良に来ていたとしても、

新羅人が新羅語を話す

日本の役所で仕事をする

漢字・漢文を使って文書を書く

ということは十分あり得ます。

実際、平城京の木簡には「百済」「百済王」など、朝鮮半島系の人々を示す資料が確認できます。

しかし、それをもって

「木簡が百済語で書かれている」

とは言えません。


結論

今回の話を一番正確に整理すると、

① 平城京木簡は約11万点規模

② その1割=約1万点が「朝鮮語」という数字は誤り

③ 朝鮮半島系の人名・氏族名などを記した木簡は実際に存在する

④ しかし、それらの多くは漢字・漢文による日本の行政文書であり、「新羅語・百済語・高句麗語で書かれた文章」とは別物

⑤ 「朝鮮語」という現代的な一括表現より、新羅語・百済語・高句麗語などを区別して考える必要がある

⑥ 「百済・高句麗は扶余系、新羅は別系統」という方向性には学術的な背景があるが、古代言語の系統関係にはなお議論がある

ということになります。

そして、あなたが感じた

「当時まだ朝鮮語というものがないのなら、いったい何語なのか?」

という疑問は、まさに正しい問題提起です。

ただ、現段階では「だから新羅語だ」と即断するより、**「もし半島系の言語的要素が確認できるなら、それが新羅・百済・高句麗のどの言語に由来するのかを個別に検討しなければならない」**というのが最も正確です。

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