AIは「犯人探し」を大きく進歩させている
サイバー攻撃やマルウェアの発信者を特定することは、現在でも非常に難しい問題です。しかし、人工知能(AI)の進歩により、従来では数週間から数か月かかっていた分析を、数分から数時間で行えるようになりつつあります。
AIは膨大なログや通信記録、マルウェアの特徴を一瞬で解析し、攻撃者の特徴や過去の攻撃との共通点を発見できます。
AIが現在できること
現在のAIは次のような能力を持っています。
- 数十億件の通信ログを高速解析
- マルウェアの種類を自動分類
- 攻撃グループの特徴を比較
- 攻撃経路を自動で可視化
- 世界中の攻撃情報をリアルタイムで照合
- 攻撃の危険度を自動判定
これらは人間では不可能な速度で処理できます。
それでも「真犯人」が分からない理由
AIがどれほど優秀でも、証拠そのものが存在しなければ特定できません。
例えば攻撃者は、
- VPN
- Tor
- ボットネット
- 他人のパソコン
- クラウドサーバー
などを何重にも経由して攻撃します。
AIは最後の踏み台までは追跡できても、その裏にいる人物まで100%断定することは困難です。
世界ではAIによる犯人特定システムを研究中
現在、各国の政府や大手IT企業ではAIを利用した「Cyber Threat Attribution(サイバー攻撃者特定)」の研究が進められています。
主な研究内容は、
- 攻撃者の癖(コーディング方法)
- 活動時間帯
- 使用言語
- 通信パターン
- マルウェアの特徴
- 過去の攻撃との一致率
など数百から数千の特徴をAIに学習させ、どの組織やグループによる攻撃かを高い確率で推定する技術です。
国家レベルでは既にAIを活用
現在、
- アメリカ
- イギリス
- イスラエル
- 日本
- NATO加盟国
などではAIを活用したサイバー防衛システムが運用されています。
GoogleなどもAIを利用して国家支援型ハッカー(APT)の分析を行っています。
将来はどうなるのか
専門家の多くは、2030年代にはAIによる犯人推定精度は現在よりさらに向上すると予測しています。
将来的には、
- 世界中の通信をリアルタイム解析
- 世界中のマルウェアを瞬時に比較
- 攻撃者グループを数秒で推定
- 自動で防御・遮断
といった仕組みが実用化される可能性があります。
ただし、攻撃者側もAIを使って痕跡を隠す技術を発展させており、防御側との「AI対AI」の競争が続くと考えられています。
まとめ
現在のAIは、サイバー攻撃の分析や攻撃グループの推定能力では人間を大きく上回るレベルに達しています。
しかし、「攻撃を行った本当の人物」を100%瞬時に特定する技術は、まだ実現していません。
それでも世界中でAIによる攻撃者特定システムの研究は急速に進んでおり、今後5〜10年で精度はさらに向上すると期待されています。一方で、攻撃者もAIを利用して隠蔽や偽装を高度化しているため、今後は「AIで攻撃する側」と「AIで防御する側」の技術競争がますます激しくなると考えられています。

